強引なカレの甘い束縛


毎日課される宿題の多さゆえに講習会のあとはすぐに家に帰っていたけれど、すべてを終えた今、心からの解放感に後押しされて、ふたりで飲みに行くことになった。

ひたすら講義に集中し、家に帰ってからも宿題でわからない所があれば電話で相談しあい、何度もため息を吐きながら夜を過ごした。

そんな五日間で互いの距離を縮めた私たちは、達成感というすがすがしい想いとともにお店のドアを開けた。

ここに来る前に、空いている席はないだろうと思いながらも電話をかけたのは、この間陽太とともにランチをごちそうになった『マカロン』のオーナーの輝さんだ。

かなり人気があるお店で、いつも開店とともに満席となり、すぐにお客さんが列を作ることで有名なダイニングバー。

本来なら、私もその列に並んで順番を待つべきなのに、電話をしたとき、輝さんは「姉貴から、多分こっちに飲みに来るだろうから席を作っておいてあげてって連絡があったんだ。カウンター席で申し訳ないけど、ちゃんと用意してあるから、講習会だっけ? 無事に終了したご褒美においしいお酒をおごるから早くおいで」と優しく言ってくれた。

私が参加した講習会に、砂川さんも以前参加したことがあるらしく、宿題のわからない所を何度か質問させてもらった。

仕事ができる人だとは知っていたけれど、私が欲しいと思う答えを的確に与えてくれたり、講義の前に目を通しておいた方がいい資料を貸してくれたりと、必要なことの数歩先をよみ、万全の態勢で臨む必要性を教えられ、さらに彼女に憧れる気持ちは強くなった。

おまけに、最終日の今日、私と稲生さんが『マカロン』に立ち寄るだろうことまで予想して先手をうつなんて、その勘の鋭さには脱帽だ。






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