強引なカレの甘い束縛


難しい手続きではないけれど、幾つかの部署に提出する書類があり、説明しようと思ったのだ。

私は結婚や出産の慶事だけでなく、不幸があったときなどにも必要な手続きの窓口となって対応している。

入社以来担当しているこの手続きをはじめ、私が日々繰り返している仕事には継続的なものが多く、事務職としては当然の毎日を送っている。

「病院のナースステーションにでも頼めばいいのか?」

プリンターから出てきた書類を徳井くんに手渡すと、彼は不安げに問いかけてきた。

「うーん。病院によって違うみたいだけど、たいていは事務手続きの窓口に提出してるみたい。何日か必要だから、早めに出しておいたほうがいいよ。この書類がなきゃ進まない手続きもあるし」

「わかった。今日は午後休とって和美の顔を見に行くからそのときにでも出しておく」

「あ、私も会社が終わったあと赤ちゃんを見に行きたいんだけど、大丈夫かな」

「ああ。面会は夜の七時までだから、それさえ守れば大丈夫。母子同室だから、和美の病室でふたりに会えるぞ」
「なんだか、顔の筋肉がゆるんでる」

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