オフィス・ラブ #another code
そのあまりのしつこさに辟易しながらも、いったい彼らは日々を何してすごしているんだろうと純粋に不思議になった。


会社の利益に貢献するのが、社員だろう?

そりゃ、何もしなくても給与は出るが、そんなんで毎日、面白いか?


若手を味方につけると、どんないいことがあるんだ。

選挙で出世が決まるわけでもなし、つまらん自尊心が満たされるくらいで、誰にもなんの益もないだろう。


ろくでもない言質をとられないため、次長や参謀と、第三者の目のない場所で会話することは絶対に避けた。

目を合わせることすら避け、けれど失礼のないように振る舞うのは、なかなか気骨の折れることだった。



『お前と、あと数人らしいぞ』



ある時、加倉井にそう言われて、愕然とした。

他は、丸めこまれたり飽きられたりで、いまだに言い寄られているのは、それだけだというのだ。

なぜ自分が、そこまで残ったんだろう。



『アドテクは、注目度も高いしね』

『ステータスとしては、ほしいだろうな』



楠田と加倉井が言うのを、苦々しく聞いた。

政治というにもチンケすぎるこの勧誘ゲームは、まるで子供の遊戯だ。


新庄くんがほーしい、と節をつけて歌う加倉井に、勘弁してくれと頭を抱える。

その頃は、まだそうやってふざけている余裕もあった。


最近ではもう、加倉井も手段を選ばずフォローに入るようになり、それはとりも直さず、事態の異常さを表していた。



「会合の誘いは、まだあるのか」

「そうですね、定期的に」

「行くなよ。会社からレッテルを貼られたら、はがすのは不可能だ」

「承知しています」

「仕事をでっちあげてでも断れ。お前のでっちあげたとおりに、出張でもなんでも行かせてやる」



加倉井にも次長の部下としての立場があるだろうに、ここまで後ろ盾となってくれるのは心底ありがたい。

そして、そうしたカムフラージュの突発業務に目をつぶってくれているグループ長も、心強い存在だった。

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