オフィス・ラブ #another code

慣れない深夜の道を走らせる。

特に目的地があるわけでもなかったので、手近なインターから高速に乗り、車の調子を確かめた。


首都高に似て、分岐や合流の激しいこの高速は、標示を見たところで、どの路線がどの方面に行くのか、さっぱりわからない。

自由に走らせるには、相当走りこまないとダメだなと考えた。


けれど、これが手元にあるというだけで心強い。

いつだって、どこへだって、車があれば行くことができる。


先日、泊まりに来た恵利が不調を訴えた時。

車がないことの心もとなさを痛感して、その週末には、車を取りに戻った。

無理やり調整したタイトなスケジュールの中、家に上がる暇もなく、とんぼ返りで車を出し。

けれど今思えば、あの時一瞬でも、彼女に会っておけばよかったのだ。


ろくに話をする時間もとれない帰省で、連絡したりしたらかえって気をもたせるだろうと、あえて黙っていたのだけれど。

結局、その翌日の中途半端な電話以降、連絡はとれず。

自分は明日から、20日間の海外出張だ。


面白くない気分で、くわえた煙草から煙を吸う。

このまま東京まで帰って、押しかけてやろうか。


会いたいのは、自分だけなんだろうか。


声を聞きたいなどと思っているのは。

自分だけなんだろうか。



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