オフィス・ラブ #another code
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金曜の夜から、行ってもいいですか?

気持ちのいい声が耳を打つ。



「かまわない、俺は、遅くなると思うけど」

『部屋で待ってても、いいですか』



もちろん、と答えて、少し笑った。

彼女はいまだに、当然のことに対して、こうして自分に承認を求めてくる。


昼休みの喫煙所で、携帯を閉じる。

そこへちょうど、マネージャーが入ってきた。



「家だと女房がうるさくて、このひとときが安らぎだよ」



言葉とは裏腹に、まんざらでもなさそうな顔で煙草を取り出す。

東京の人間のはずだが、影響力のあるこちらのイントネーションに、ほんのわずか、染まっている。

新庄が火を差し出すと、どうもね、と律儀に礼を言って身をかがめた。

そうだ、と思いついて尋ねる。



「車で走る、いい場所、ありませんか。日帰りできる」

「いっぱいあるよ、近場なら、ちょっと南に下ったところにあるスカイライン」



昼も気持ちいいけど夜景もいいよ、あと他にはね、と惜しみなく教えてくれる。

彼が、家族連れのドライブをこよなく愛すると知ったのは偶然だった。



「デート?」

「まあ」

「いいなあ、若い人は」



そう言われて、苦笑が漏れた。

いい歳と言われるかと思えば若者扱いされたり、どうやら自分は微妙な年齢にさしかかっているらしい。

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