オフィス・ラブ #another code
『お車の修理、完了しましたよ』
担当セールスからの連絡に礼を言って通話を終える。
自室のデスクに向かいながら、ほっと息をついた。
ようやく、すべての傷を消してやることができた。
気づけばガーニッシュもやられていて、どうせパーツ交換になるのならと、全部まとめて正規ディーラーに修理に出したのだった。
これで休暇の後半は車を使うことができる。
この2月、新庄は久々にまとまった休みをとっていた。
記憶にある限り、こんなにゆっくりするのは数年ぶりで、少し前までは楽しみにしてもいた。
けれど。
会社にいられないと、堤の動向が見えない。
大塚の無事が確認できない。
間の悪さに、つい嘆息した。
堤が、新庄の記憶にある彼のままならば。
ああいう性格でも仕事に対しては手を抜かず、むしろ貪欲で、挑戦的に成功をとりにいくはずだ。
だから、6部に何か悪影響を及ぼすことはあるまい。
むしろ春日部の後任に堤、と聞いた時には、ある意味で、ちょうどいいと思ったくらいだった。
――いずれ営業ってやってみたい、つぶしききそうだし。
転職してきたすぐの頃からそう言っていた彼が営業部に移ってきたのは、新庄に遅れること2年。
近い年次と階級のため、意識せずとも耳に入る評判を聞く限りでは。
あの柔らかい物腰と、読心術かと思うような勘のよさと、時に辛辣ともいえる、本質を突く言動で。
独自の営業スタイルを築き、成果を上げているようだった。
同じ営業局に来るのは特に不思議なことでもなく、なぜなら彼らのいた企画3部は、11営全体を受け持つプランニング部署で。
そこから営業に移るのであれば、当然11営に入るのが誰にとっても無駄がないからだ。
むしろ競合他社を受け持つ部門へは行かれないため、局外へ出るほうが珍しい。