オフィス・ラブ #another code
虫の知らせとでもいうのだろうか。
なぜだかその電話は、とらなくてはいけない気がした。
彼女からのSOSだと。
そう何かが、告げていた。
「なんで!?」
あの青ざめて、ぐったりと座りこんでいた姿はどこへやら、ものすごい剣幕で大塚の同期が叫ぶ。
地下鉄の駅に入りかけたところを戻ってきた大森マネージャーが、投げつけられた枕を受けとめて、彩、と鋭い声を発した。
呼ばれた彼女は、ぴたりと動きをとめて、悔しげに大森を見あげる。
新庄は、猛獣使いみたいだと感心しながら、大塚をうながして医務室を出た。
泣きそうな声で、彩が、と電話してきた大塚は、同期が元気を取り戻したことで、ようやく明るい顔を見せていた。
久しぶりだ、彼女とこうして、ふたりでいるのは。
彼女は何か考えているように、じっと自分の靴を見つめている。
その横顔を眺めていて、ふと、話をしたいなと思った。
声が聞きたい。
最近、どうしていたか、聞きたい。
正直にその欲求に従って、仕事終わりに食事でもと誘ったら。
大塚が、泣きだすかと思うような表情を見せたので、ぎょっとした。
なんで、泣くんだ。