同居ノススメ


慎太郎の過去にも
何人かの恋人はいた。

好意を持ってくれた女性と
きちんと向きあおうとしていた
時期もあったし、

付き合って、
半同棲した時期もあった。

ただ恋人と一緒にいる時間が
増えるごとに慎太郎の負担は、
増えていくばかりだった。

いつも近づいてくるのは
家事・炊事をこなせる慎太郎に
依存し、頼る女性ばかり。

そんな心と体に
重くのし掛かる負担から、
慎太郎は、逃げ出したくなり

自宅に帰らなくなったこともあったし、
相手からいなくなったこともあった。

そのたびに、自分は誰も
愛することができない
冷たい人間なんだ、と落胆した。


そういう想いを
繰り返してきたので

最近は、仕事に没頭し、
恋人も作らなかった。

そして職場では
徹底的に冷徹な仮面を
被り続けた。

が、あの日、桃を見かけて、

衝動的に近づきたいと思い
初めて自分から声をかけた。


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