同居ノススメ

慎太郎は、桃が持っていた
文庫の中から
おすすめの推理小説を借りて
読んで見た。

正直、
読書が好きな方ではないが、
桃がススメてくれた本は、
とても読みやすく
どんどん引き込まれていき

他にもこの作者の作品を
読んでみたい・・なんて思い、
いつの間にか
読書に没頭してしまっていた。


すると隣りから

「ズズッ・・・グス・・
グッ・・・ス・・」

と、
鼻をすする音が聞こえてきて
慌てて桃の右耳からイヤホンを
取った。

「どした?桃?」と聞くと

「あっ・・泣いてた・・。

だってこの曲、
切なすぎるでしょ!?」

と言い、桃は
慎太郎の左耳に
外されたイヤホンを
ぐっと押し込んできた。


「あぁ・・これな・・。

大好きな相手だけど、
別れなくちゃいけないんだよな。

でも、またいつか会いたいよ
って感じの歌だよな。」

「うっ・・うん・・・。
でも実際こんなに綺麗な別れ方、
できなよね」と言いながら、

色気のかけらもないような音を
ズズズッと出し、鼻をかんでいる
桃の姿が、なんだか愛おしかった。

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