君を選んだから
「もう焼けてるよ〜!、早く食おうぜ。」

「わかったぁ。」

「あおいちゃんも、早くおいで〜!」

「は〜い。」


明るいお兄さんの声と共にお肉の焼ける美味しそうな臭いが漂って来て、食欲を刺激し始める。

中身のぎっしり入った重いクーラーボックスを、黙って一人で運んでくれる須賀くんが頼もしい。


このまま須賀家の面々が作り出す温かな空気の中にいたら、自分がニセ彼女であることを忘れてしまいそう。

私を受け入れてくれているのがわかるし、みんな本当に良い人なんだもん。


だから、何だか申し訳なくなって来る。

頼まれたとは言え、この人たちを騙してることが。

私だって、本当は「フリ」なんてしたくないのに。


お会いするならこんな型じゃなく、正式な彼女、いや、できれば嫁候補として紹介されたかったな..........

なんて、そこまで言ったら話が飛躍し過ぎかもしれないけど、優しくされたらそんな夢も見たくなる。


そもそも須賀くんには、好きな人っているのかな。

彼女を作らないのは、たまたま付き合いたいと思うほどの人がいないだけ?

それとも、好きな人に上手く思いを伝えられないから?


どちらにせよ、須賀くんに恋人がいないことは確かだし、今、ここにいるということは諦めなくてもいいんだよね?

だったら、やることはただ一つ。

「ニセ彼女」からの昇格を目指すしかない。

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