君を選んだから
本気で愛したことがある相手って、そういうものなのかな。

随分と長い間、その存在を考えることすらなかったはずなのに、不思議と一瞬ですべてを思い出せる。


そんな人を忘れられるはずがない。

どんなに奥に隠していても、記憶の引き出しを開けた途端、数え切れないほどの思い出が広がって行くんだから。


私は嬉しい.........んだよね?

匡史に会えて、ずっと言えなかった「ごめんね」が言えたことも、言ってもらえたことも。


あまりにも突然、しかも須賀くんのいる前で、嘘みたいな出来事が起こったことにまだ動揺している。

それだけでも相当な刺激なのに、真正面で笑っている匡史がちょっと目を引くイケメンに変身してたりするから、このドキドキがどこから来るドキドキなのかよくわからなくなっている。


「こっち帰って来てから、何回か高校の友達と飲んだんだけど、お前、実家出ちゃったって聞いたから、もう会えないかもって本気で思ってた。」

「それは私も。」

「でも、これからは普通に仕事で会えるんだ。すげー嬉しい。」

「ホントだね。」

「過去の情けない思い出はリセットできたから、また友達から始めよう。」

「うん。」

「あぁ、ヤバい。新店、超楽しみになって来た。」


ニッコリ微笑む笑顔に当時の面影が重なり、何とも言い難いような「キュン」を感じる。

だけど、この気持ちの正体って何なのかな.........?

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