エリートな彼と極上オフィス
「あ、ねえ今週、山本くん見ないんだけど、出張?」
「だよ」
「いつ帰ってくる?」
「知るか、自分で訊け」
昼食に出るエレベーターで一緒になった中川が、人波に合わせて降りながら、何よ! と憤慨した。
「なんでいきなりそんな不機嫌なのよ、男のくせに!」
「わかったわかった、悪かったよ、戻りは金曜、これでいいか」
何その態度、と向かいのコンビニに入りながら、露骨に非難される。
男のくせにってな、そっちこそなんだよ、と心中で毒づいた。
まったく女ってやつは。
棚を物色する横顔を眺める。
作りも整っていて、あちこち気を配ってあるけど無理している感じはなくて、こういうのがドストライクって男も山ほどいるだろうに。
なんでまた、よりによってあんなめんどくさいのに気を取られてるんだか。
ふと思いついて尋ねてみた。
「山本とふたりでDVD観るってなったらさ、どんなの選ぶ?」
「はあ?」
いきなりの質問に怪訝そうにしながらも、同期の気安さからか、中川は素直に、そうねえと考えるそぶりを見せた。
「向こうが飽きなそうな、ハリウッド系のわかりやすい映画で、ラブシーンがちゃんとあるやつ」
「まだまだだな」
「殴られたいの?」
剣呑な目つきも気にならず、広秋は自分が何を食べたいのかさっぱりわからないせいで、ぼんやり苦悩しながら弁当コーナーを見つめた。
ほんと、まだまだだな、お互い。
でもしょうがないよな、どうしようもないんだもんな。
わかるよ。
正直、ものすごくわかる。
なおも何ひとつ選び出す気配のない広秋に、さすがに何かおかしいと気がついたのか。
なかば心配そうに、なかば不気味がっているような様子で。
私、選んであげよっか? と中川がおそるおそる訊いてきた。
Fin.

