エリートな彼と極上オフィス

「くたびれてんなあ、頑張らされたの?」

「うるせーな」

「由美さんて色っぽいよな」



なんだそのガキみたいな感想は。

そう言ってやりたかったのだけど、広秋は自分の頬が熱くなってくるのを自覚していた。

航の視線が、また実に頭に来る。



「…千明」

「うるせえっての!」

「何も言ってないだろ!」



傷ついたような声をあげる航を置いて、先に電車を降りた。

もうダメだ。

冷静を装うのも限界だ。


由美の笑い声が聞こえる気がした。



『このへんで許してあげる』



広秋は荒い息をつくばかりで、返事もできなかった。

由美が長い髪をかき上げて、にこっと笑う。



『同世代の子とできなくなっちゃったら困るもんね』



隣の部屋のふたりのことを危ういところで思い出さなければ、あられもなく声をあげていたのは、由美ではなくたぶん自分だった。

なんだっけ、肉じゃが?

まさしく自分は、これまで「肉じゃがでぇす」しか相手にしてこなかったってことなんだろう。


悔しい、とも違う。

ただただショックで、一夜明けた今もまったく整理できておらず、逃げるように部屋を出てきた。

別にそんな目的で由美と寝たわけじゃないのに。

人妻なんてどうでもよくて、由美だったからなのに。


軽い気持ちだっただけに衝撃が大きくて、乗換口の改札機に乱暴に携帯を叩きつけて、広秋はほとんど走るようにホームを目指した。

また飲もうね、と別れ際に由美は言った。

広秋の受けたダメージなんてすべてお見通しって顔で、済まして微笑んで、寝起きの色香を振りまいていた。


くっそー!




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