エリートな彼と極上オフィス
「ドアを閉めてください」
「はい」
いそいそと室内に入り、言われたとおりドアを閉めたところで、コウ先輩の言葉が脳裏によみがえり、はっとした。
なんだっけ、若い子好き?
「それで、何をお知りになりたいのかな」
「役員人事の真意と、IMCへの影響です。岩瀬CMOに理解を示さない方たちで固められた人事だという噂もあり」
完全に先輩の受け売りだけど。
上層部のパワーバランスに詳しくない私にはわからなかったが、見る人が見れば、今回の人事はそう受け取れるらしい。
正面に腰を下ろした私に、榎並部長がにこっとする。
「あなたは率直だね」
「今なら許されるかなと」
「私相手だから?」
「まだ二年目だからです」
なるほど、と楽しそうに笑う。
ひとつ咳をすると、少し真剣な口調になった。
「私も知っていることに限りがあるので、全部は答えられないけれど、今回の人事は社長の肝いりだと聞いている」
「CMOは?」
「彼はあくまでマーケティングの最高責任者であって、人事には関わらないからね」
「専務は」
「安永(やすなが)経営企画部長のことかな?」
うなずいた。
IMCの発足を熱心に推進した人の一人だ。
「彼ももちろん、承認済みのことだよ」
その返事は堂々としていて、信用に足るように思わせたけど、私には何か、隠された事実があるように聞こえた。
戻ったら先輩に報告しよう。
いやでも、榎並部長とふたりきりになったなんて言ったら、怒るかもしれない。
やっぱり、とりあえず黙っておこう。