エリートな彼と極上オフィス

「ありがとうございました、失礼します」

「何かわかったら、あなたにご連絡してもいいかな」



およっ。

戸口から振り返ると、人によってはわざとらしいと感じるであろう微笑みが待っていた。



「ぜひです」



頭を下げてから退室しようとして、念のためつけ加える。



「IMCの、湯田です」

「存じ上げているよ」



にっこり、と音がしそうな笑顔だった。

ううむ、と内心で唸りながら、当初の目的だった開発本部へと急いだ。





IMC室に戻ろうとしたところを、突然目の前に突き出てきた腕に阻まれた。

びっくりして立ち止まると、コウ先輩だった。

廊下にある給湯スペースで、携帯電話を耳に当てている。


私に向かって、空中に何か書く真似をしてみせるので筆記具を渡そうとしたら、それより速く胸ポケットに手が伸び、ペンを抜き取られた。



「もう一回言ってくれ、戦略本部の誰?」



片隅にあった紙ナプキンに、部署と名前を次々書き留めていく。

その切羽詰まった雰囲気に、込み入った話かと立ち去りかけると、腕をつかんで引っ張り戻される。

おとなしく待つ私には目もくれず、先輩はしばらくそうやって、名前を聞き出してはメモしていた。



「サンキュー千明、この件、後で話そう」

「人事の話ですか」



通話を終えた先輩に尋ねると、しーっと指を口に当てて、廊下に人がいないか確認する。

紙ナプキンには20名近くの名前が挙がっていた。



「近々、もう一度人が動くらしい。一部は予想も入ってるけど、これがそのリスト」

「玉突き…にしちゃ、偏ってますね」

「だろ」


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