徒然なるままに、短歌部
「実は、裃は、文芸部時代、あんな奴じゃなかったのよ」
あんな奴?
「あんな奴とは……つまり、煙草も吸わなかったし、服装もあんなにだらしなくなかったってことですか?」
「そういうことね。どっちかというと、物凄く暗いオタクみたいな印象ね。ほら、クラスに一人はいるでしょ? 誰とも口を利こうとしないで、教室の席に一人座って本を読んでるような人」
「あ、それ、公生(こうせい)のことやろ?」
加持先輩の頬をカナ先輩がグーパンチする。空手黒帯というのは本当らしい。
でも、意外だ。あのサラダ先輩が昔は地味だったなんて。地味なサラダ先輩を頭の中で想像するけど、上手くできない。
「じゃあ、どうして今みたいな感じになっちゃったんですか?」
「そうなった理由については、私はわからないけど、時期は確か、文芸部を辞めた辺りからね」
文芸部を辞めた辺りから?
ということは、今のサラダ先輩を作ったのは、文芸部を辞めたことと関係しているということになる。
戸松先輩はサラダ先輩から直接聞けと言った。カナ先輩は知らないと言っている。
つまり、文芸部を辞めた理由を知るには、私が自分で推理するしか方法がないということだ。