甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

戻ってから、あまり話したことのない人を中心に声をかけてまわった。
途中、自分のコップが空きかけていたので、飲み物を取りに向かう。

そのテーブルの近くで課長や加賀くん達、数人が話していた。
持田さんも課長の傍をキープしたかのようにいたので、あながち中村達の観察は間違ってはいない。

結局、気になってしまってちらりと様子を伺う。
課長は仏頂面だけど、持田さんに声をかけられ頷いているようだった。

課長は、彼女のアプローチに気づいているのかな。何を思っているんだろう。

誰が悪いわけでもないのに、さっき取り消したはずの考えが、ぐるぐる頭の中を回りはじめると、溜め息を吐きたくなった。

来たついでにオードブルも取り分けようと移動すると、加賀くんの声が聞こえてきた。

「持田ちゃん、彼氏いないんだ」
「そうなんです。独り身で淋しいんですよ」
「まじで。じゃあ、俺とか俺とか俺とかどう?」
「えー、私、誠実な人がいいです」とやんわりダメ出しをされると笑い声が響いた。すごく楽し気なムードが、今は遠いものに感じる。
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