甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「まあ、おいおい話すよ。会社だし」とやんわり断りをいれた。
「あ、誰にも言わないようにね。とくに加賀くん」と若槻がお決まりの釘をさす。

「あ、か、加賀っち? も、もちろんっすよ」
どこか挙動不審に見えて、「どうしたの?」と尋ねると
「あ、若槻さん。おはようございます」と手前にいた若槻に向かって、タイミング良く通りすがった加賀くんがヘラヘラしながら挨拶した。

続いて奥にいた私に「おはようございます」と声をかけ、視線が中村に移るとなぜか目を見開き固まった。

「おはよう」と中村は答えるけど、どうしてか俯いたままで
「んじゃあ、先行ってまーす」と一緒に行く約束などしていないのに、加賀くんは大急ぎといった感じで立ち去って行った。

若槻と私は一瞬ぽかんとしてから、顔を合わせ、同時に中村の方を見た。
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