甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「雪、やんできたな」
顕は空を見上げた。
「本当だ」
「こっちは雪、本当に降らねーよな」
「そりゃ秋田と比べたら、降らないよ。あっちは雪すごいんでしょ? 雪かき毎日するレベル? 雪好きだけど、生活に直結するとなると少し心配だな」と冗談めかした。
「毎日、雪かきはしねーな。こっちもそうだけど、沿岸だから、そこまで雪はひどくない。ひどいのは内陸のほうだけだよ」

穏やかに過ぎる時間の中、顕と今、こうして一緒にいられる自分はすごく幸せだ。

振り返るように、浮かんでくる。
親の喧嘩や元彼との価値観の違いでの言い合い、方向性が間違ってると友人に対して正そうとする自分。

相手がおかしい、間違っているとどこかで思っていたのだけど、相手のその生き方を肯定できなかった自分がおかしかった気がする。
受け入れなくていい。ただ肯定する。そんなシンプルなことが難しかった。

純粋に肯定した後のフィルターを通さないで見る世界、そこにある自分の感情が本物のような気がした。

だけど、どうしたら、そうあれるのか首を傾げたくもなった。
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