甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「こっちに住みたいか」
顕と一緒にいたいという気持ちより、こっちに住みたいという思いを汲み取られたので、突き放されたように感じた。
「できたらなだけで、そこまで深く考えてないよ。それに、住んでもないのに、行きたくないって言うのも変だし」

顕がこっちに住む気がないのはわかっているし、結局は、私も同じ気持ちなんだと慌てて伝える。

広瀬通りに出ると、顕は立ち止まり
「俺は、もし真唯子が一緒に行くのを迷っているなら、離れてもいいと思ってるよ。真唯子が大事にしたいものを大事にしてもらいたい」
「……それは顕だよ」
顕は横に首を振る。
「幸せを感じるほうを選べばいい。今すぐ行くってわけじゃないから、頭で考えてないで、心で決めてほしい」

そう言うと、停まっていたタクシーに乗り込んだ。慌てて隣に座る。
運転手に目的地を告げると、悪い、少し眠いと顕は目をつむった。

私は、車窓を眺めながら、本当は顕に「幸せにするから、着いてきてほしい」と言ってほしかったのだと気づいた。

そんな不安、俺がかき消してやるから、心配するなって。
未来が明るいものだと希望に満ちているものだと、顕の言葉で導かれたがっていたんだ。

自分と離れてでも、私が大事にしたいものを大事にしてほしいというのは、顕なりの思いやりなのかもしれない。

だけど、そんなこと求めているから、顕の言葉や態度が冷たく感じて当然で、目をつむったらまつげが涙で濡れて、慌ててぬぐった。
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