甘いだけの恋なら自分でどうにかしている
顕は驚いたように立ち止まるので、もう一度告げる。
「こっちに住みたいな。顕と一緒に」
「………」
「………」
「そうか。俺も同じだよ」
「………うん」
「そうだったらいいなと感じてはいた。こっちに来てから」
顕は、ああだからか、真唯子を実家に連れてきた理由が今わかったよと、独り言のように呟いた。
私はよくわからなくて、きょとんとする。
その顔がおかしいというように、ふっと笑ってから「結婚するか」と顕が言った。
それは、いつぞやの朝、「飯、作ってやるか」と言われたときのような明るくて優しい響きだった。
私は、自然にうんと頷いていた。
曇っていたはずの空から、一筋の月明かりが差し込み、雪道を明るく照らす。
そんな雪の夜は、清らかで優しくて、甘美な気持ちにさせるにはもってこいで、私からそっともたれかかると、抱きしめてなんて言わなくても抱きしめてくれて、愛してほしいなんて言わなくても自然と愛してくれる人がいることを、奇跡だなぁと感じるには充分だった。