甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

相手を呪うなと課長に言われたことを思い出した。

食べ終えた頃には気持ちは少し落ち着いていた。
「美味しかったー。ご馳走さまです。あったまりましたね」

店を出ると綾仁くんからまたメッセージが届いていた。
『今日も仕事です。頑張ります。ありがとうございます』

彼のお店に行ってみようかなとふと感じたことに従いたくなった

「じゃあ課長、ここで失礼します」
「どこか寄るのか」
「はい」
「じゃあな。気をつけろよ」
「はい」

駅から距離があったのでタクシーを拾った。
当分恋はしなくていい気もしているし、焦る必要もないと思う。
ただ恋が始まるのか始まらないのかとか、そんなことを考えている部分に舵を取らせていてはきっと同じ現実が続くだけで、明日も明後日も同じことを考えているのは明白だ。

認めよう。私はそれだけ臆病で優柔不断な存在なんだと。
行動力のある若槻とは、生きるステージが違うんだから、羨ましいとか言ってること自体がおかしかった。
今の私が出来ること。
どうせ無理だからとか怖いからって見ないふりや気づかないふりをすることをやめる。それは本当の幸せを遠ざけることなんだとちゃんとわかることだ。
わかれば自然と行動しているはずなのだから。
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