夢恋・second~その瞳に囚われて~
私の知らない拓哉の三年間。
隣にいたのはおそらくあのときの彼女なのだろう。
拓哉とたくさんの時間をともにしてきた彼女を、一瞬羨ましく思う。
いいえ、いけない。
そんなことを考えていたら仕事にならない。
私は頭を軽く振った。
「ねえ、秋田さん。少しいい?コーヒーでも飲もうか」
「あ、いえ。なんでもありませんから」
私の様子を見て気を遣っているのだろうと思い、事務的に答えた。
「いや、いいから。いきなりの業務で戸惑うのは無理のないことだよ。一回、今後の作業の進め方を説明させて」
そう言って立ち上がった彼を見上げる。
私を見下ろす眼鏡越しの瞳は、恋人だった頃のものとは違う気がする。
部下を気遣う上司のものだ。
「はい…」
私も諦めて立ち上がった。
この人はいつもそう。
周りへの配慮を忘れない。
だったらどうして、恋人の私にはあんなことができたのだろう。
そんなことを考えながら、彼の後に続いて部署を出た。