クールな同期が私だけに見せる顔
「省吾、好きよ。あの時は間違えてごめんなさい。謝るから、どうしたら許してくれるのかな」

「わかんない」

「何よ、それ?」

「じゃあ、俺のこと愛してるくらい言えよ」

「嫌だ。そういう事は、そっちから言ってよ」

「あのなあ……」

彼は、一生懸命に言葉を探した。

けれど、愛してるっていう言葉以外に、適当な言葉は見当たらなかったみたいだ。

省吾は、私のことを睨みつける。

そうして、言葉を探すのを止めたっていうみたいに、小さくため息をついた。

省吾は諦めたように、首をぶるっと振ると
「晴夏が欲しい」と言って私の上にのしかかって来た。

「口では言えないから、体で示してやる」

本当に不器用なヤツ。

こういう時は、確信がなくたっていいのに。

あやふやな気持ちでもいいから、愛してるって言えばいいのに。

彼には、そういう真似ができない。



こういう時って、何だろうって考える。

体を重ねることで分かったことって、何だったんだろうって考える。

分からなかったことが分かった。

これはいいと思う。

分かってたことが、分からなくなった。


愛してるって言えない不器用な男。

でも、目の前にいる女が、自分のこと愛してるのかどうか気になるのだ。

そんなのは、体を交えても分からないよ、省吾。

「省吾は、何て言って欲しいの?」

「ん?」

「ほら、何でもいいから言ってみなさいよ」

「ただ、好きだって言って欲しい」

「それだけでいいの?」

「それから……
俺は、お前のものだって言って欲しい」



「わかった。省吾は、私のもの。だから誰にも渡さない」




「ん、いいと思うけど、よく聞こえなかった。もう一回言って」



「素直にもう一度聞きたいって、言いなさい」


「はい」


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