フラワーガーデン【アリシア編】

第11節 フジエダ先生の温かい手

エドは私の目の前でパチンと指を鳴らすと、今度はその手の中から先程のイヤリングを出し、私を驚かせる。

「あなたの本職はマジシャンなの?」

「まさか」

笑っているエドに手を引かれ歩いているうちに、いつの間にか大広間へと続く階段の上まで来ていた。

「おいで」

差し出されたエドの腕に手を通し、彼の歩調に合わせて横を歩く。

私たちが階段の上段に立つと、先程までざわめいていた招待客達は水を打ったように静まり返り、一斉に私たちを見上げ、次の瞬間、どよめきと感嘆の溜息に変わる。

エドがクスリと笑うと耳元で囁く。


「みんながあなたに見惚れているようだ」


大広間から流れてくる管弦合奏の調に乗りながら、私達は一歩一歩階段を踏みしめて下りて行く。


爪弾き跳ねる弦の調はピツィカート・ポルカ

微笑み掲げる人々の手には炭酸の立ち上るシャンパン


温かな祝福の拍手に包まれながら、さざめく人々の間をエドは嬉しそうに私の手を引いて、招待客の輪の中へと入って行く。



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