フラワーガーデン【アリシア編】
おじい様はすごくご機嫌で、ワイングラスを片手に招待客数人と談笑してる。


おじい様は私とエドを側に招き寄せると、大勢の招待客を前に私の15歳の誕生日とエドの婚約を高らかに宣言する。


みんなの視線が集まる中、ワルツが始まる。


格調高い『皇帝円舞曲』の調に乗って、エドは大広間の中央へと私を導く。


右回りのワルツ

高いホールド


踊りにくいのではないかと言う私の思いとは逆に、まるでこの指輪のようにぴったりとエドは私に寄り添いリードする。


「緊張していますか?」

「……いいえ」

「では、つまらない?」

「……」

「アリシア、どうしました?」


素っ気無い会話と、逸らされる目線。


『ウィーンの森の物語』

『シトロンの花の咲くところ』

私達は立て続けに3曲踊る。

曲が遠のき、心がジョージへと還っていく。


もしかしたら、本当はどこかにジョージがいるかもしれない。

あの柱の陰に?

それともあのドアの向こうに?

もしかしたら、庭に出ていて……。


生れてからずっと一緒だったから、
ジョージのいないこの時間が……
これからの時間が信じられない。


ジョージ……


意識が屋敷を超えて、ジョージを求めて彷徨う。



あ!

いけない!

エドの足を踏んでしまったわ!


エドがしかめた顔を見て、途端に現実に戻る。



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