フラワーガーデン【アリシア編】
移動する車の中で、エドは運転手と2,3言葉を交わす。


時折、ワイパーがフロントガラスの小さな雨の滴を拭いて視界を開く音だけが、耳障りなまでに聞こえてくる。


エドが私に話し掛けてきたのは、彼が泊まっているホテルに到着してからだった。


部屋に入るなりエドは鍵をソファの上に放った。


そして、疲れたようにネクタイを緩めて、脱いだ上着をソファに投げると、戸口に突っ立ったままの私をじっと見つめた。


「……何もしませんよ。この前のように、僕の目の前で死のうとされては敵わない」


彼の言葉にほっと胸を撫で下ろしつつも、私は壁の隅に張り付いたままだった。

いつまでも動かない私に肩を竦めると、彼は受話器を手にした。


「とりあえず食事を。もう遅いのでルームサービスを取りましょう。何が食べたいですか」

「こんな時間にルームサービスなんて……」


時計の針は夜の10時を超えていた。

「ああ……。この部屋からのオーダーは特別ですよ。何にします?アイスクリームがいいですか?それともケーキ?」

「食事じゃないわ、それ」


私がぷっと吹き出すと、「ウケを狙いました。あなたがあまりにも頑なにしているので……」と幾分彼の表情も和らいだ。


「何もいらないわ。このまま休……」


応えている途中で、エドのお腹がぐぅぅ~っとなった。

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