Ri.Night Ⅳ

「ちょ、信じらんねぇ……!」

「お前何やってんだよ!」

「きったねぇ!」


ジュースを吹き出したあたしを見て、一斉に騒ぎ出す皆。


いやいやいや、噴き出すでしょうよ。

だって今、全国模試で貴兄と競い合ってるって言ったんだよ!?


「凛音、タオル!」


「あ、ありがと、時人くん」


時人くんからタオルを受け取って、梅ジュ-スまみれになった足を急いで拭く。



「凛音、ベタベタすんだろ。風呂入ってこ──」


「やっぱお前だったのか」


「へ?」


貴兄の言葉を遮ったのは彼方。


その声に足を拭く手をぴたりと止め、顔を上げると、彼方は貴兄を見ていた。


「お前の名前は“東條 貴音”。そうだろ?」


目が合った彼方はいつものおちゃらけた彼方ではなく。

けど、真剣という訳でもない。


貴兄の真意を探るような、そんな表情をしている。


貴兄は彼方の真っ直ぐな視線に応えるようにゆるりと口角を上げると、



「そうだよ。俺の名前は“東條 貴音”だ」



自ら自分の本名を名乗った。



「貴兄……」


それは、あたしからすれば驚くべき事であり、同時に信じられない事で。


あたしが知る限り、貴兄が獅鷹幹部以外の人間に本名を教えた事は今までに一度もない。


なのに貴兄は今、自ら本名を名乗った。

驚かない方がおかしい。

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