Ri.Night Ⅳ
その声が耳に届いた直後、掴まれていた髪の毛を振り払うように離された。
『……ぅ』
「リン……!!」
床に思いっきり叩きつけられたあたしはこめかみ辺りを強打。
ぶつけた瞬間脳が激しく揺さぶられ、軽い目眩に襲われる。
「かはっ!!」
──次の瞬間、打撃音と共につい今まであった背中の重みが一瞬で消え失せた。
と同時に近付いてくる幾つもの足音。
「リン、大丈夫か?」
『………』
「貴、頭打ってる。動かすな」
貴、兄?……と、煌?
「リン、少しの間ジッとしてろ」
返事をしたいけど、頭が痛くて目が開けられない。
「……ゥグッ」
「──なぁ。お前、誰に手出した?」
「カハッ!」
「応えろよ」
「……っ、」
抑揚の感じられない声と平行して聞こえるのは、打撃音と呻き声。
「俺のモンに手出して生きていられると思うなよ」
「……ッ!」
感情の欠片も感じさせないその声はあたしの知る十夜の声ではない。
「調子に乗りやがって」
苦痛混じりの声はあの男のもの。
止まらない打撃音。
それは一方的なのか、それとも両者から繰り出されたものなのか。
目を閉じているあたしにはどちらのものなのか分からない。
「コイツを返して欲しければその二人を解放しろ」
打撃音が鳴り止み、代わりに響いたのはさっきと変わらない抑揚のない声。
それは即ち、十夜の勝利を意味するものだった。