猫柳の咲く季節に

色あせた記憶ー希美ちゃんの涙ー



希美side


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たしか、小学2年生のときだった。


生まれた時からずっと一緒だった飼い犬が死んだ。


そのときは、『死ぬ』なんてことよく分からなくて、ただ寝ているだけなんだとずっとそう思ってた。


冬だったから、虫とかのように冬眠しているものだと思ってた。


だけど、その犬がだんだんと冷たくなっていくのを見て、もう目を開ける事はないんだと気づいてしまったんだ。


涙さえ出なかった。


悲しくて、苦しくて、幼い私には、よくわからなかったんだ。


ずっとずっと、私が死ぬまで隣で笑って鳴いていてくれるんだって、それが普通だと思っていたのに…

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