強引社長の不器用な溺愛
下から顔を覗き込むと、社長が私の両手をぎゅっと握った。

向かい合い、手を繋ぎ、見つめ合う。

なに、この構図。
またしても、胸が早鐘を打ち出した。

ええい、お酒のせいかな、この動悸息切れは!


「婚約者っぽいだろ」


「ふざけてるんですか?もう」


社長の声がふざけてないって、私はちゃんと知っていた。
瞳が穏やかに凪いでいるのも、酔っていない証拠。

それからゆっくりと社長の唇が降ってきた。

私の唇と重なる。

柔らかく触れ合った唇同士はほんの一瞬温もりを共有して、すぐに離れた。

優しいキスだ。
過去2回のキスとは全然違う。だけど、今までで一番胸が苦しい。


「やっと、またキスできた」


社長が、ぽつりと言って、鮮やかに笑った。

私は手を振り払うこともできず、しばらくその笑顔に魅入っていた。

公園の木々が揺れ、風が吹いてきた。空気が冴える。
夜は目が覚めたように美しかった。




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