強引社長の不器用な溺愛
「当日予約は無理ですよね。明日は……どうだろうなぁ!」


「篠井―」


「来週は?平日で行けそうな日ありますか?」


「絹ちゃーん」


「水曜のディナーは特別メニューがあるらしいんで、そこに合わせてみるのは?」


「だからさー」


俺の話したいのは別な事。

なあ、聞いて、篠井。




「東弥さん、好きです」




日常会話と同じペースで言われたのは、俺が聞きたかった言葉だった。
不意に耳に飛び込んできたそれに、慌てて首をねじった。

横を歩いていた篠井は真っ赤な顔をして、立ち止まっている。
地下道の埃っぽくて薄暗い通路で、向かい合う俺と篠井。


「……っ、東弥さん!」


ちゃんと届いていただろうかと、あらためて声を張る篠井に、俺は微笑んだ。


「聞こえたよ」


そう言って、大きく篠井に歩み寄る。そして、その細い身体をぎゅっと抱きしめた。

柔らかくて心地よい篠井の温度。
いつも近くで香っていたシャンプーの匂いが鼻をかすめ、俺の多幸感を煽った。
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