強引社長の不器用な溺愛
きっと同じ気持ちでいてくれるだろうと見下ろすと、俺の胸に顔を埋めた格好でふがふがもがいている篠井。

なんだ?
何か言ってるけど、聞こえない。

耳をすますと、「苦しい!」「息ができません!」とふがついている篠井。

え、ごめん。
ちょっと力入れ過ぎた。

抱擁を緩めると、涙目の篠井の猛抗議に遭う。


「殺す気ですか!だから、社長は荒っぽいって言うんですよ!馬鹿じゃないですか?」


「わりー、ちょっと感動し過ぎて力加減を間違えた。初夜は気を付けます」


「しょっ初夜……!」


篠井が赤い顔にまん丸い目で問い返す。
だから、その反応がいちいち可愛すぎなんだよ、おまえは。
口、とんがってんぞ。

俺は堪えきれず吹き出して、ひよこのように突き出た唇ではなく、篠井の額にキスをした。


「で、さっきの言葉、取り消し利かねーぞ?いいか?」


「……いいですよ。あなたのものになっても」


ツン発言でも可愛い篠井。
まいったな、ホント。いつ間に、こんなに好きになっていたんだろう。

たぶん、最初のキスはひとつのきっかけに過ぎない。

俺はその前から、篠井が大事な唯一だったんだろうな。

篠井がどうかは知らないけれど、とにかく、もう俺がもらう。
どこにもやらないし、離さない。

一生、公私ともにしばりつけてやる。

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