強引社長の不器用な溺愛
沙都子さんは目を細め楽しそうに笑った。


「ね?キスなんて、いつでも誰とでもできるのよ。大事なことは、そのキスで絹さんの心が動いたか」


このお姉さんは、全力で私をからかっていらっしゃる……。
ほっぺとかじゃない。
わざと唇にかするかかすらないかのキス。


「そんな可愛い顔するなんて、社長はドキドキしたでしょうね。案外、向こうの心が先に動いちゃってるかも」


「沙都子さんの痴女!」


「お褒めにあずかり光栄です」


沙都子さんはいたずら成功が嬉しいらしく、くすくす笑うと、私の手からずり落ちそうな清子ちゃんを受け取った。

私は痴女姉さんと眠り姫を見送ると、ひとり家に向かって歩き出した。

心が動いたか。
あの晩のキスで。

……わかんない。ある意味めっちゃ動いたけど、それは『ヤベーッ!』ってことで、相手が社長だってことで。

でも、あのキスは最高だった。
もし、許されるなら、相手が社長じゃなければもう一回経験したい。
そのくらい、思い出すだけで胸がいっぱいになる。

心地よくて、あたたかくて、幸せで。
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