自殺列車
このまま電車を待つわけにもいかず、あたしは入ってきた改札へと足を向ける。


その時だった。


ブワッと強い風が吹き、あたしは自分の顔を庇うように腕で顔を覆った。


砂ぼこりがまき散らされ、枯れた木の葉が舞い上がる。


もう、なに?


そう思い目を開けたとき……あたしの視界に真っ黒な電車が映った。


「え……?」


いつの間に?


そう思い、改札へ向いていた足が電車の方へ向き直る。


電車は2両編成で、進行方向のドアだけが開いた。


しかし……ホームにいる誰もが動こうとせず、あたしは周囲を見回した。


蝶に誘われてフラフラとここまで来てしまったあたしとは違い、他の人たちは電車を待っていたはずなのに、みんな一様に電車を見つめているだけで乗ろうとしない。


早く乗らなきゃ出発してしまうかもしれないのに、みんなどうして乗ろうとしないんだろう?
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