自殺列車
そう思った時、電車のドアから男の人が1人下りてきた。


その人は黒いスーツに身を包み、車掌さんの帽子を被っている。


電車からユラリと姿を見せた車掌さんは、あたしを入れてホームにいる6人を手招きした。


『早く乗れ』


そう言われているような気がする。


電車に乗るつもりで来たわけじゃないあたしは、それを無視して歩き出そうとしていた。


けど……。


目の前にあの青い蝶が現れたのだ。


「あっ……」


思わず声を出し、その後を追う。


蝶の青い羽は日の光を浴びてキラキラと輝き、金色の鱗粉(リンプン)をなびかせて踊る。


それはまるで人間を楽しませているかのようにも見える。


蝶を追っていると誰かにぶつかってしまい、あたし足を止めた。


見上げると、先ほどの車掌さんがこちらを見下ろしていた。


その顔は恐ろしいほど青白く、生気を感じさせなかった。


「あ……ごめんなさい」


すぐに謝り、数歩後ずさる。
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