自殺列車
そっか。


じゃぁ旺太があたしを抱きしめたのはあたしのためだけじゃなかったんだ。


そうとわかると少しガッカリして、自意識過剰だったかなと思い、恥ずかしくもなった。


旺太はあたしから離れると、椅子から立ち上がった。


「もし、この空間が実験で作られたものだとしたら、その犠牲者が出たことになる」


旺太の言葉に、みんな真剣な表情を浮かべる。


「普通、死人が出たりすれば実験は取りやめになることだろう。だけど、この空間はまだ終わっていない。と、いう事は……これは普通の実験じゃないと言う事だ」


「生死を問わない人体実験。もしくは、金持ちのゲームに参加させられているか……」


優志が呟く。


「ゲーム?」


あたしは眉を寄せてそう聞いた。


「そう。金持ちがこういう隔離空間を作り、俺たちプレイヤーを放り込む。そして俺たちが右往左往しているのを見て面白がっているんだ。


外に出たらゲームオーバーというルール設定の下、賭けているかもしれない」


「そんな事、本当にあるのかよ」


朋樹が言う。


「裏社会では時々ある話らしい」


優志の言葉にあたしは目を見開いた。


そんなゲームが実在しているなんて、趣味が悪すぎる!
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