キッチン【短編】
キッチンにて
職場の先輩である高嶋さんに告白されて付き合いだしたのは先月の事。


密かに思いを寄せていた同じ課の先輩から、たまたま二人で残業した時に「彼女になって。」と言われたのだ。


高嶋さんはモテる。


スラッとした身長に適度に引き締まった体はスーツ姿を一層、際立たせ、それだけでも社内の女子からの視線を集める。


その上、端正に整った顔で時折、優しく微笑まれたら誰でも恋に墜ちてしまうんじゃないかと思う。


私も入社して高嶋さんを初めて見た時、何てカッコいい人なんだろうって思った。


けれど直ぐに同じ課に配属されてからは真面目に仕事に取り組む姿やさりげない優しさを知って、見た目だけではなく内面そのものにも惹かれるものがあり、私の思いは確実なものへと変わっていった。


そんな思いを寄せていた高嶋さんから、まさかの告白に当然、私は舞い上がりその場で「よろしくお願いします。」と返事をした。


ちょっとしたメールのやり取りや、仕事帰りに食事をしたり、お休みの日に一緒に出掛けたり……


高嶋さんとの時間を過ごせば過ごすほど、高嶋さんへの思いは更に募り、もっと側にいたい、もっと触れてほしいと思うようになっていた。


だから、課の飲み会の帰りにそのまま高嶋さんの部屋に来たのは自然の事であり、私が望んだ事でもあった。


そして、その夜、私は高嶋さんと身も心も一つに重ねた。




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