あなたがすき
背中と指
同じクラスでも、あまり話さないからよく知らない。滝原くんはそんな人だった。

イヤホン片方取られて、カノンを少しだけ一緒に聞いた。重なった指先の温度が、妙に残ったようなまま、午後の授業に突入した。

当然、ではダメなんだけど、内容がさっぱり入ってこない。斜め前の滝原くんの背中に視線が向かってしまった。見た目は少しふんわりした、優しい印象だったけど、背中が意外とがっしりしている。姿勢も背筋がしゅっと伸びてちゃんとしている。ちょっとかっこいいかも。

「…はらさん…川原さん!」
「は、はい!」
「ぼーっとしてないで、次読んで!」

恥ずかしい。

授業後、ため息つきながら次の授業の準備をしていたら、机の横に滝原くんがいた。

「何に気を取られてたん?」
「いや…別に。」
「そっか。」

何か少し寂しそう。すると滝原くんに手を触られた。

「俺は川原さんの、指が気になって、思い出してた。」
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