何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「遥斗!私は大丈夫だから……」



私の言葉を聞いた瞬間、鋭い目つきで社長を睨んでいた遥斗の視線が私へと向けられた。
その瞳は、怒りに満ちていた。
でも、その中には哀しみが隠されているのが分かる。



「馬鹿言うんじゃねぇよ!大丈夫な訳ねぇだろーが!」

「遥斗……」



遥斗は私を心配してくれている。
それは痛いくらいに分かる。


だけど、私はその優しさに甘える訳にはいかない。
だって私は、操り人形だから。ただの道具だから。


だから……。
遥斗から目を逸らし、この手を離さなければいけない。


でも……そんなこと出来ないよ。



「貴様ら……私を無視してただで済むと思っているのか?」



怒りで震える社長の声が私を現実へと引き戻す。

このままだと……拓哉さんに迷惑が掛かってしまう。
そう分かっているのに、何も言葉が出ない。


不安で震える私の体を包み込む様に遥斗の腕が私に回される。



「お前は何も心配しなくていい」



私の耳元で優しく囁くと、遥斗は怖い声で社長に言い放つ。



「ただで済むと思ってるのかって?
それはこっちの台詞だ……状況を理解してねぇみたいだから教えてやるよ」


そう言って遥斗は怪しげに笑みを浮かべた。
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