何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「俺はアンタの不倫の証拠をバッチリ握ってるぜ?
勿論、梓沙に厭らしい事をした証拠もな」



ニヤリと不敵な笑みに社長は怯えた様に体を震わせた。

不倫って、この人……結婚してたんだ。
それなのに私や他の人に手を出すとか信じられない。


呆れなのか、怒りなのか、よく分からない感情が私を取り巻いていく。



「そんな証拠何処にあるんだ!?
見せて見ろ!!」



口調が荒くなり、人が変わった様に焦りだす社長。
その姿を見た遥斗は待ってましたと言わんばかりの顔で胸ポケットから何かを取り出した。


それには見覚えがあった。
小型のボイスレコーダーとカメラだ。



「確認してみるか?」

「……っ……」



社長は青ざめた顔をしながら遥斗の手の中にあるカメラたちを見ていた。
そして、確認する事はせず顔を逸らす。
追い詰めるかのように遥斗は言葉を投げかける。



「まぁ……ヤマシイ事がなければ証拠を見せろなんて言わねぇよな?
潔白なら証拠何かあるはずがねぇ。
動揺するって事は……心当たりがあるって事だろーが」



遥斗はカメラとボイスレコーダをベッドに置くと、床に座り込んでいる社長の元へと歩み寄る。
そして胸ぐらを掴みながら低い声を出した。



「梓沙に2度と近付くんじゃねぇよ。
そうすればこの証拠は俺の中で留めてやる」

「わ……分かった……!
だから妻には……」

「交渉成立だな。
恨みの矛先を柊家に向けるんじゃねぇぞ」

「わ……分かってる!!」



社長はそう言うと逃げる様に部屋から飛び出していった。
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