何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
ガタンと物音が響き渡った。
それと同時に私たちは顔を背ける。


さっきまで重なり合っていた手も、あんなに近かった顔も、今は遠く感じる。
ドクンドクンと激しく揺れ動く鼓動は私の胸を苦しく締め付けた。


どうしたのだろうか……。
遥斗とは恋人でも何でもない。


偽装恋人ではあるけど、それだって脅されて始まった関係だし……。
間違っても“キス”をする間柄ではない。


なのに私は……。
遥斗とキスをしようとしていた。


それだけじゃない。
キスが出来なくて、凄く哀しい気分になっている。


自分の気持ちが分からなくなって混乱した私はわざと明るい声を出す。



「肉じゃがが好きって意外でさ!
なんか遥斗はイタリアンって感じがするからつい笑っちゃってごめんね」

「い……いや、俺こそ悪かった。
あんな事で拗ねたりなんかして」

「う……ううん……」



私たちはギコチナク笑いそれぞれ立ち上がる。



「……」

「……」



2人を包み込む沈黙は決して嫌なものではなかった。
ドキドキするけど、気まずい気持ちはあるけど……。


それでも居心地が悪いとは感じなかった。


遥斗とならたとえ会話がなくても構わない。
一緒にいるだけで落ち着くから……。
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