何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～
「似合ってるけど……お前を苦しめているようにも見える」

「え……」

「真っ赤なドレスが……狂った愛情の鎖にしか見えない」



五十嵐さんの言葉にゴクリと唾を飲みこむ。


ふと自分の体を見れば煌びやかな赤いドレスが私の体に纏われていた。
一見、綺麗な色だが……どこか恐ろしくも見える。


このドレスは拓哉さんが選んでくれたものだ。
私に似合うと言って……。



「……狂った愛情って……何言ってるんですか」



私は笑顔を張り付けて五十嵐さんを見る。


本当は笑っていられる状況でもないにも関わらず私は笑顔を作り続けていた。
だってそうでもしなければ耐えられないから。


小刻みに震える体に気が付かないフリをする。


自分でも分かっているんだ。
このドレスが拓哉さんの異常な程の愛情を表していると。


溢れんばかりの嫉妬や私への執着心がこの毒々しい赤色に込められている。
私の全てが拓哉さんの物であるという証……。



「……なぁ……俺が……」



五十嵐さんが何かを言おうとした時、私の体に悪寒が走った。
その理由を示すかのように後ろから低い声が放たれる。



「何をしている……梓沙」

「あっ……」



その声を聞いた瞬間
目の前が真っ暗な闇に覆われた様な気がした。
< 21 / 430 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop