何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
拓哉さんは振り返る事はなかった。
でも……。



「……」



真っ直ぐと伸びた右手がユラユラと動いている。
これが拓哉さんなりの……返事なんだよね。


病院の中に消えていく拓哉さん。
その後ろ姿が見えなくなるまで私は見続けていた。



「……梓沙」

「……遥斗……私……」



私の言葉を遮る様に、遥斗は私の肩を抱き寄せて囁く。





「帰ろうぜ」



たったひと言だったけど……。


私にとってはどんな言葉よりも嬉しかった。
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