何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
しばらく歩けば1つの5階建ての小さなビルが目に映った。


その4階の窓に大きく“何でも屋”と書かれている。
それを見た私の頭にはパーティーでの記憶が蘇ってくる。


“何でも屋社長、五十嵐 遥斗”


そうだ……この人は何でも屋という変わった職業の人だった。


と、言う事はもしかして……。
いや、もしかしなくてもココが五十嵐さんの会社……。


足を止めながら見上げていれば小さな笑い声が聞こえてきた。



「おーい、置いてくぞ」



さっきまで私の隣にいたはずの五十嵐さんはいつの間にかビルの入口に立っていた。
呆然とビルを見上げる私を面白そうに見ながら。


笑われている、その事実に私の顔に熱が帯びていく。
子供っぽいと思われただろうか……。
少し不安になりながら私は五十嵐さんに駆け寄ろうと足を動かす。


でも、その足はピタリと止まった。


なぜ今、私は不安に思ったのだろう?
初対面に近い五十嵐さんに子供っぽいと思われたって何の支障もないはず。
それなのに私は……。


物思いにふけていれば今度は怒鳴り声に近いものが飛んでくる。



「早くしろよ!
暑いだろーが!!」

「……すみません!!」



少しムスッとした五十嵐さんに急いで駆けよれば軽くオデコを叩かれた。



「痛ッ!?」

「痛くねぇだろーが。
さっさと行くぞ」



ニカッと白い歯を見せて笑うと、先にビルへと入っていく五十嵐さん。


私はというと……。
その大きな背中をぼんやりと眺めるだけだった。


おかしい。
何かがおかしい。


五十嵐さんの笑顔を見た瞬間


ドキドキと激しく心臓が揺れ動いた。


それはまるで好きな人を見た時と同じ感覚だった。
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