男の秘密
人生初のミッション2
梅雨も明けて、段々と暑くなって来た。

通勤の短い時間でも汗ばむようになった、日曜日に村田の結婚式があった。

純白のドレスに身を包み、幸せそうに笑っている村田を見ると、優も幸せな気分になった。

同期でやった、歌と踊りも思ったよりも盛り上がり、頑張った甲斐があったと思った。

そして、忍から贈られた黄緑色から緑色に変わっていくグラデーションと、裾に施された刺繍が美しいワンピースはみんなの注目の的だった。

忍からのプレゼントだと言いたかったが、色々考えて止めておいた。

「みんなに言いたかったなぁ」

みんなの前では飲む事が出来なかった優と羽奈は、美味しいご馳走を前に酒を飲む事が出来ず苦行を強いられていた。

お開きになったら、一目散に地方の地酒を多数取り揃えている居酒屋に向かった。

カウンターに座って直ぐ、地酒を頼む。

「本当に良く似合ってるわ」

居酒屋に来る格好でない事は分かっているが、二人とも着替えずに来ていた。

羽奈は紺色のタイトなワンピースに身を包み、その美しい体のラインを余すことなく見せていた。

先程から他の客がチラチラと二人を見ているが、声をかける程の勇気は無いようだ。

「羽奈のも羽奈の綺麗な体を引き立ててて素敵だわ。」

「夜バージョンにならないようにするのが大変だったわ」

クスリと笑いながら酒を飲む。

「そうなの?どちらにしても良く似合ってる」

会社用のメガネを外して、結い上げていた髪を下ろした羽奈を、嬉しそうに目を細めて見る。

羽奈が境界線をキチンと保ちたいと思っているようなので、あえて言わないが、優にはどの羽奈も羽奈なのだから、あまり意識して見た事が無かった。

言葉にした事は無いが、羽奈はそんな優の態度にいつも救われていた。
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