男の秘密
それでも、念には念をという事で、奥まった席を、羽奈が予約してくれていた。

「それで・・・どうだったって聞くまでも無いわね」

開口一番に面倒臭そうに笑いながらそう話す羽奈に、日置とのやり取りを思い出し、顔が赤くなる。

途中お勧めランチを頬張りながら、夏祭りの話と、プロポーズされた話をした。

「プロポーズされたの?!」

珍しく声を上げる羽奈に、優はコクリと頷くが、羽奈は珍しいものを見るような目で優を凝視している。

「凄い進展ね」

「そうなの、信じられなくて、頭が真っ白になって、返事をせずに帰ってしまって・・・」

「何時、返事をするの?」

「え!・・まだ気持ちの整理が出来てなくて」

「まぁ、結婚って人生で一番大きな決断だから、慎重になるのも無理わないわ」

羽奈の言葉に、ホッとした。

忍にプロポーズされて、直ぐに返事しなかった事がずっと気になっていたので、羽奈の言葉で忍への罪悪感が軽くなった。

『結婚って・・想像がつかないわ』

両親が早くに他界した優にとって、夫婦とはどんなものか分からない。

小学校の低学年で既に両親が居ない生活で、祖母と二人の家はとても静かで、祖母の作る煮物や漬物がお袋の味となり、ハンバーグやカレーは食卓に上った事が無い。

優も、我侭になるので、好き嫌いは言わずに出されたものを食べていた。
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