男の秘密
「ただ今、・・・優?」

どの位ぼんやりしていたのだろう、自分を呼ぶ声に意識を戻すと目の前に羽奈が居た。

「羽 奈・・・」

羽奈の顔をみたら気が抜けて、また泣き出してしまった。

「ちょっと!何があったの?」

上司に事情を説明して、仕事の引継ぎ等を手早く済ませて会社を出たのが丁度お昼休みだった。

優が昼食を食べていないだろうと思い、途中テイクアウト出来る惣菜を買って家に戻って来た。

「ただいま」と声をかけたが、優の返事がない事を不振に思う。

始めは眠っているのかと思い、静かに室内に入ったのだが、羽奈の顔を見た瞬間から号泣する姿に度肝を抜かれた。

「忍さんが・・忍さんが」

子供のようにしゃくりを上げて、忍さんがと繰り返すだけで要領を得ない優を落ち着かせる為に、優しく抱きしめ、背中をさすった。





長い時間そうしていると、やっと落ち着いた優が話し出した。

「忍さんね、俳優だったの」

「え?俳優?」

「そう、斎賀忍っていう俳優」

「えぇ?! 斎賀忍?!」

いつも冷静な羽奈には珍しく大きな声を上げた。
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