男の秘密
事の真相
「日曜日に急に木戸さんから、映画の打ち上げをするって言われて、連れて行かれたんだが、その時にスマホを盗まれてしまって、・・・それに気付いたのが、自宅に帰ってからだった。
慌てて木戸さんに連絡したら、ロックをかけていても使用停止にして解約した方が良いって言われて、アドレスを引き継ぐ事も出来ないまま新しい携帯になって・・・。
しかも、打ち上げの時の写真をスクープとして週刊誌に取り上げられてしまったから、ホテルに缶詰状態にされて、直に説明にも行けなくなって。
悪い・・。言い訳ばかりで」

「ううん。ちゃんと説明して貰えて良かった。凄く不安だったから。
でもどうして俳優だって事を黙ってたの?」

「それは・・・。俳優として人気が出てから、おれ自身じゃなくて、俳優の斎賀忍としてしか見てもらえなくなったんだ。
急に知らない友達や彼女が増えて、俺の個人情報がネットに流出しだして、段々疑心暗鬼になって、他人と距離をとるようになったんだ。」

その時の事を思い出しているのか、辛そうな顔をしている忍を、抱きしめたい衝動に駆られた。

「そんな時、俳優としての俺を知らない優に出会ったんだ。
俺の事を純粋に見てくれて、凄く嬉しかった。
でも、俳優だって分かったら変わってしまうかも知れないっていう不安が出てきて、言えなくなったんだ」

「この前始めてテレビで忍さんを見た時、あぁ世界が違うんだって思ったの。
一緒にいていいのかな?って。
神田亜里沙の方が、お似合いじゃないかって、私自分に自信が無いから、プロポーズされても直ぐに返事が出来なくて・・・
でも、釣り合うとか釣り合わないじゃなくて、私は忍さんと一緒に居たいって今は思える。
スキャンダルのお陰かな」

はははっ、と自嘲気味に笑うと忍に抱きしめられた。
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