一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「彼女は在学中に着物の着付けや茶道に華道、ペン字、習字といった実用的な資格からファイナンシャルプランナーや簿記といった就職に有利になるような資格を取れるだけ取っていたんですよ。履歴書に書ききれないほどたくさん。これには驚きましたね」
就職難のご時世、なにが吉と出るかは分からなかったから必死に勉強して資格を取得しまくった。
事実、そのことが評価されて複数の会社から内定をもらった。
その中でも『努力されたんですね』と言ってくれた社長の言葉が嬉しくて、この会社を選んだ。
「なるほど。各々のことはわかりました。それで野田くんは彼らたちには別の相応しい部署があると言いたいのですか?」
会長の低くゆっくりとした口調に野田専務がひとつ頷き、早口で答えた。
「彼らには適した部署があります。推進課は廃止しましょう。それが社のためになります」
はっきりと『廃止』と口にした野田専務を会長が横目で見た。
その視線はその場の空気を凍らせるほど冷たく、野田専務は逃げるように目を逸らした。
というよりあの全てを見透かすような目で見られて逃げない人などいないだろう。
見られてもいない私でさえ思わず俯いてしまった。
会長の威圧感だけがその場に残っている。
張り詰めた空気を破ったのは会長本人だった。